2007-04-16 [長年日記]

[] 『チベット旅行記(一)~(五)』(河口慧海,講談社)

明治30年代に、鎖国政策を布くチベットにヒマラヤを越えて単身密入国したお坊さんの旅行記。

ラサ(拉薩)とはチベット語で「神の土地」を意味するので、人々は清廉潔白で敬虔な仏教徒であり、神々しいイメージがあった。しかし著者が見てきたチベットでは暴力、密告が支配し、人々は野蛮で汚わい、役人は賄賂を要求するという。著者にいわせれば、チベットは闇(あん)雲たる国。

そんなチベットの文化がまたおもしろい。「彼らは大便に行っても決して尻を拭わない」、「生まれてから身体を洗うということはない」、「多夫一妻」など。町の造りにしても、町の真ん中に掘られた溝は大小便の溜池らしい。一方で、8代から12代までの法王は皆毒殺だとか、刑罰に、眼球をくり抜いたり手首を切断したり、もっとえげつない刑があったりだとか…。現代だと独裁国家と呼ばれるに相応しい状態であり、中国共産党による「開放」もあながち的外れではないんじゃないかと思えたり。

インド、ネパールを経てチベット入りする過程はまさしく冒険であり、探検記録としても楽しめた。『チベット旅行記(一)』

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